
退職後の健康保険、「任意継続」と「国民健康保険」のどちらが得か迷いますよね。2026年4月から新しく「子ども・子育て支援金分」が加わって計算がさらに複雑になったので、最新ルールで一緒に整理していきましょう。
退職が近づいて、健康保険の手続きを調べ始めた方の多くが「任意継続と国民健康保険、結局どっちが得なの?」で止まってしまいます。ネット上には年収で決まるという記事もあれば家族構成で決まるという記事もあり、しかも2026年度から新しい「子ども・子育て支援金分」が加わって、既存記事の多くがまだ古い制度のままです。
この記事では、2026年度(令和8年度)の最新料率で任意継続と国保の保険料を実際に計算し、年収帯・家族構成・退職理由のパターン別にどちらが得かを数字でハッキリさせます。さらに「2022年の改正で可能になった、1年目は任意継続→2年目から国保に切り替える最適戦略」の具体的な切替タイミングまで踏み込んで解説します。
結論:年収と家族構成で「得する方」が変わる


まず結論からお伝えします。あなたのケースに該当するものを見つけてください。
✔ 配偶者や子どもを扶養している
✔ 退職後も同程度の収入が続く予定
✔ 会社独自の付加給付を受けたい
✔ 単身または扶養家族なし
✔ 会社都合退職(非自発的失業)
✔ 退職後に大幅に収入が減る見込み
どちらにもグレーゾーンがあるため、この後のシミュレーションで具体的な金額を確認してください。特に重要なのは次の3点です。
- 退職時の標準報酬月額(任意継続は上限32万円)
- 扶養家族の人数(任意継続は追加保険料ゼロ/国保は人数分加算)
- 退職理由(会社都合なら国保に手厚い軽減措置あり)
任意継続と国民健康保険の仕組みを整理

保険料の計算方法が全く違うので、そこを最初に押さえておきましょう。
任意継続は「退職時の給料」で決まる
任意継続被保険者制度は、退職前に加入していた健康保険を最長2年間そのまま続けられる仕組みです。保険料は「退職時の標準報酬月額×保険料率」で計算されますが、在職中は会社と折半だったのが、退職後は全額自己負担になります。
ただし重要な上限があります。協会けんぽの場合、退職時の標準報酬月額が32万円を超えていても、計算は32万円までで打ち切られます。この上限を活用できるのが任意継続の最大のメリットです。
国民健康保険は「前年の所得」で決まる
国民健康保険(国保)は市区町村が運営する保険で、前年1月から12月までの所得を基に計算されます。退職した年は前年分の所得が反映されるため、1年目は在職中並みの保険料になりやすいのが特徴です。
保険料は「所得割額(前年所得×料率)」と「均等割額(加入者数×定額)」の合計で、自治体ごとに料率が異なります。扶養の概念がないため、配偶者や子どもも加入者として均等割が人数分かかります。
2つの制度の決定的な違い
この表だけで判断すると混乱するので、実際の保険料金額で比較してみましょう。
年収別・家族構成別シミュレーション【令和8年度最新】

ここから令和8年度の最新料率(協会けんぽ東京支部・新宿区国保)で実際に計算した結果を見ていきます。
シミュレーションの前提条件は、協会けんぽ東京支部の健康保険料率9.85%・介護保険料率1.62%・子ども・子育て支援金率0.23%、国保側は新宿区の令和8年度料率を使用しています。他の都道府県・自治体では料率が異なるため、あくまで目安として参考にしてください。
45歳・単身の場合:年収500万円が分岐点
具体的な金額で確認しましょう。次の表が単身45歳の年間保険料の比較です。
単身で扶養家族がいない場合、年収400万円までは国保、500万円以上は任意継続の方が年間で数万円から数十万円安くなります。年収500万円前後はほぼ同額になるため、会社独自の付加給付や健診制度の内容で判断する余地があります。
扶養家族がいる場合:任意継続が圧倒的に有利
配偶者や子どもを扶養している場合、任意継続の強みが一気に際立ちます。任意継続は扶養家族を何人追加しても保険料は本人分のみで済むのに対し、国保は加入者1人増えるごとに均等割(医療分+支援分+子育て分で約67,000円)が加算されるためです。
扶養家族が1人でもいる場合は、年収400万円程度でも任意継続の方が有利になります。家族3人・4人と増えれば差額は年間20万円から30万円以上になり、2年間の任意継続期間中に40万円から60万円の節約が可能です。

扶養家族がいる方は、シミュレーション上ほぼ任意継続で決まりです。国保の均等割が人数分かかる仕組みは想像以上に重いんです。
2026年度の新制度「子ども・子育て支援金分」で何が変わった?

2026年4月からは両制度に「子ども・子育て支援金分」が新たに加算されるようになりました。見落としがちですが必ず反映させるべきポイントです。
2026年4月(令和8年4月)に「子ども・子育て支援金制度」が新設され、健康保険料の一部として徴収が始まりました。協会けんぽ・国保の両方で同時に導入されたため、2025年以前に書かれた比較記事の試算は今年度から数千円から数万円の誤差が出ています。
協会けんぽ(任意継続)側の変更点
協会けんぽでは、令和8年4月分(5月納付分)から子ども・子育て支援金率0.23%が全国一律で追加されました。任意継続の場合、労使折半ではなく全額自己負担のため、標準報酬月額32万円の場合で月額736円(年額8,832円)の負担増になります。
東京支部を例にすると、令和8年度の任意継続の実質料率は次のように変わりました。
介護保険料率:1.59%
合計:11.50%(40-64歳)
介護保険料率:1.62%
支援金率:0.23%(新設)
合計:11.70%(40-64歳)
国民健康保険側の変更点
国保側も令和8年度から「子ども・子育て支援金分」が第4区分として追加されました。新宿区の場合、均等割額は18歳以上の加入者1人につき1,873円、所得割率は0.27%が追加されています。限度額は3万円で設定されています。
18歳未満の子どもには均等割が全額軽減されるため、子育て世帯には配慮されていますが、扶養家族に18歳以上がいる家庭は人数分の均等割が上乗せされるため、任意継続の有利さがさらに強まる構造になっています。
子ども・子育て支援金分の追加は、任意継続・国保の両方に及びますが、国保側は「加入者数ぶん」加算されるため、扶養家族が多いほど国保の負担増幅が大きくなります。2026年度以降は「扶養家族ありなら任意継続」の構図がより鮮明になりました。
「1年目は任意継続→2年目は国保」最適切替戦略

2022年1月に制度が変わって使えるようになった最強の節約テクニックがこれです。退職後に収入が減る方は、ぜひチェックしてください。
2022年1月の健康保険法改正で、任意継続被保険者はいつでも希望すれば脱退できるようになりました。それまでは2年間の「任意継続縛り」があり、途中で国保に切り替えることは原則できませんでした(保険料の未納による強制脱退のみ可能)が、現在は申し出が受理された月の翌月1日から自由に脱退できます。
この改正を活用すると、次のような最適戦略が可能になります。
なぜ「1年目任意継続→2年目国保」が最強なのか
国保の保険料は「前年の所得」で決まるため、退職直後の年度(1年目)は在職中並みの所得をベースに計算されるので高額になります。しかし退職後に無収入または低収入で1年過ごすと、翌年度(2年目)の国保料は大幅に下がります。
具体的なシミュレーションで差額を見てみましょう。年収400万円で退職した単身者(45歳)のケースです。
切替のベストタイミング
注意点として、切替判断は「必ず試算してから」行ってください。退職月や退職金の扱い、翌年の副収入次第では、2年目の国保が思ったより安くならないケースもあります。退職した年の所得は確定申告後に初めて確定するため、2年目の4月から5月に自治体窓口で試算してもらうのが確実です。

この戦略は、2022年1月以降の退職者にしか使えません。それ以前の「2年縛り」を覚えている方は、念のため現行制度を確認してください。
会社都合退職なら国保が圧倒的に有利

倒産・解雇・雇い止めなどの会社都合退職は、国保に非常に強い軽減制度があります。該当する方は迷わず国保を選んでください。
65歳未満で倒産・解雇・雇い止めなどの理由(非自発的失業)で退職した方は、国保に「非自発的失業者の軽減措置」という制度があります。前年の給与所得を30/100(=7割減)とみなして保険料が計算されるため、保険料が劇的に下がります。
対象になる離職理由コード
ハローワークで発行される「雇用保険受給資格者証」または「雇用保険受給資格通知」に記載された離職理由番号が、次のいずれかに該当すれば軽減の対象です。
軽減後の保険料シミュレーション
年収500万円で会社都合退職(60歳単身)のケースで、軽減前と軽減後の国保料、そして任意継続を比較してみます。
軽減措置が適用されれば、任意継続と比べても年間で約28万円も安くなります。軽減期間は離職日の翌日が属する月から、その月が属する年度の翌年度末までです。つまり最長で約2年間この軽減が受けられます。
軽減を受けるには市区町村の国保窓口で申請が必要です。「雇用保険受給資格者証」と国民健康保険証を持参してください。申請しないと軽減が適用されないので必ず手続きしましょう。
一般的な自己都合退職(離職理由コード40番台)は軽減の対象外です。自己都合退職の場合は通常の年収別シミュレーションで判断してください。
よくある質問
Q1. 手続きを忘れるとどうなりますか?
任意継続は「退職日の翌日から20日以内」が絶対期限で、1日でも過ぎると申請できません。その場合は国保か家族の扶養に入るかの2択になります。国保の加入手続きは「退職日の翌日から14日以内」ですが、遅れても加入自体は可能です(ただし退職日翌日まで遡って保険料が発生)。
Q2. 家族の扶養に入る選択肢もあるのでは?
家族の扶養に入れるなら、保険料負担ゼロで最も得です。条件は原則として「年収130万円未満」(60歳以上または障害者は180万円未満)で、失業給付を受けている場合は日額3,612円未満(60歳以上は5,000円未満)が目安です。失業給付の額が大きい場合は扶養に入れない場合もあるため、家族の勤務先の健康保険組合に確認してください。
Q3. 任意継続は途中で保険料が上がることはありますか?
基本的に保険料は2年間変わりませんが、次の5つの場合は変動します。(1)40歳になって介護保険料が加わった時、(2)65歳になって介護保険料がなくなった時、(3)都道府県の保険料率が改定された時、(4)標準報酬月額の上限が変更された時、(5)異なる都道府県へ引っ越した時、です。今回の令和8年度からの子ども・子育て支援金0.23%追加も影響します。
Q4. 退職金は保険料に影響しますか?
退職金は国民健康保険料の算定において「所得」にはカウントされません。退職所得は通常の所得と分離して計算されるため、いくら受け取っても国保料には反映されません。退職金が多額でも、2年目以降の国保料は低く抑えられます。
Q5. 健康保険組合の場合も同じですか?
勤務先が協会けんぽではなく健康保険組合に加入していた場合、任意継続の保険料計算ルールが異なる場合があります。健康保険組合は独自の規約で「退職時の標準報酬月額」を基準にすることも可能で、協会けんぽの32万円上限が適用されません。退職前に所属していた健康保険組合に個別に確認してください。また健康保険組合は付加給付がある場合も多く、給付面で任意継続を選ぶ価値が高くなります。
トモコはこう判断する
シミュレーションを通じて明確になったのは、「任意継続か国保か」はシンプルな年収比較ではなく、退職後のライフプラン全体で決める問題だということです。私がこのテーマでFP相談を受けた場合、必ず次の3ステップで整理します。
もう一つ強く伝えたいのが、比較はあなたの居住自治体と加入していた健保で必ず個別試算するということです。国保料率は自治体ごとに、協会けんぽ料率は都道府県ごとに違います。この記事のシミュレーションは新宿区・協会けんぽ東京支部ベースですが、実際の金額は数万円から10万円単位で変わることがあります。市区町村の国保窓口と退職前の健保(協会けんぽ支部など)の両方で、自分の条件での試算を依頼してから最終判断することが、後悔しない選択につながります。

最もやってはいけないのは「任意継続の方が名前を聞いたことがあるから安心」と何となく決めることです。ここまでの内容を踏まえて、自分のケースで具体的に数字を出してみてください。
まとめ:選び方チェックリスト
→ YES なら 国保一択(軽減措置で7割引相当)
→ YES なら 任意継続が有利(人数分の均等割を回避)
→ YES なら 任意継続が有利(32万円上限の恩恵)
→ YES なら 1年目任意継続→2年目国保切替戦略を検討
→ YES なら 扶養加入が最も得(保険料ゼロ)
退職後の健康保険選びは、一度決めるとしばらく変更できない判断です(任意継続は2022年以降いつでも脱退できますが、1日も保険料を滞納すると強制脱退になるので戻せません)。今回の記事のシミュレーションを参考に、必ず自治体と健保の両方で個別試算を取ってから決定してください。
似たケースとして、こちらの記事で国民健康保険と家族の扶養についても比較しています。あわせてご覧ください。
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